俺は笑顔をつくり、「おう」と手を挙げて、職員室に向かって角を曲がった。




しかし、意外にも春川は、俺と同じように渡り廊下に入ってきた。







「………春川も、職員室行くのか?」





「はい」






相変わらず、声が小さい。




少し屈んで顔を近づけないと、聞き取りにくいほどだ。





どうやったら、こんなに大人しい子どもが育つんだろう?





こいつが声を上げて笑ったりとか、怒って声を荒げたりとか、友達と追いかけっこをしたりとか、そういう子どもらしい振る舞いをするところを、まったく想像できない。





こいつは家でも、こんなふうに静かな視線を周囲に向けているのだろうか?