授業が終わる少し前に、先生は教科書を閉じました。






「今日提出の課題あったなー。

数学係、あとで集めて持ってきてくれ。

あ、後期になったから係替えしたか?」






「しましたー」






「新しい数学係、誰だ?」






私は一番後ろの席で、ゆっくり手を挙げました。





先生はぐるりと教室を見渡して、私のほうを見ました。







「おー、お前か。えーと、春野………」






「うわっ、先生、ひでぇ!!

春川さんだよ!!」






「あっ、そーか、そーだったな。

すまん、春川!!」






「いえ………」







私は首を横に振り、大丈夫です、と答えたけれど。





わいわいと騒いでいる教室の中では、私の声はすぐに掻き消されてしまいました。