いつの間にか、空を吹き渡る風に春の薫りが混じるようになっています。



ワンピースの裾が風に揺られてふわふわと踊りました。




その心地よさに目を細めていると、向こうから「春川」と呼ぶ声が聞こえました。






「ごめん、遅くなって。


ちょっと会議が長引いちゃって」






「いえ、平気です」






公園のベンチを立ちあがると、先生が私の頭の先から爪先まで、ぱっと視線を走らせました。






「………先生? どうかしましたか?」





「いや、うん、………私服、かわいいなと思って」





「え………」






照れくさくて思わず俯いていると、「よし、行くか」と先生が言いました。