私はとぼとぼと歩いて、あのときのベンチに向かいました。





もう少しだけ、待ってみよう。





そう思って、腰をおろしかけたとき。






「――――春川」






囁くような声が、上から降ってきました。




ぱっと顔を上げると、






「………せん、せい……」






すこし困ったような顔の藤森先生が、私を見つめていました。






「………座ろうか」






先生は呟くように言って、ベンチを指差しました。