「―――先生」






背後から、囁くように控えめな声で呼ばれ、俺はびくりとして振り向いた。




予想通り、静かな表情の春川が立っていた。





春川は、本当に気配がない。




近くにいても全く存在を感じないので、声をかけられるたび、かなり驚くことになる。





いつの間に俺の後ろにいたんだ?






そんな思いはおくびにも出さず、俺はにこりと笑って、「どうした?」と応える。





春川は大きな瞳をゆっくりと瞬かせながら、俺の顔をじいっと見上げていた。






――――だから、そんな目で見ないでくれよ………。