『藤森先生観察日記10』







「彩香ちゃん、卒業おめでとう」





バイト先の店に行くと、店長の西村さんやバイト仲間たちが、花束を渡してくれました。




私は驚きのあまり、声が出ませんでした。





「彩香ちゃんがいなくなると寂しくなるよ」





常連のお客さんから温かい言葉をかけられて、涙腺がゆるむのを感じました。





「あっ、山田さん、我らが彩香ちゃんを泣かせないでくださいよ!」





西村さんがおどけた調子で言うと、店内が明るい笑い声で満たされました。





そのとき新規のお客さんが入って来たので、私はみんなに頭を下げて裏に行き、制服に着替えてホールに入りました。