「――――藤森先生」






周りのざわめきにかき消されそうな声が、俺の名を呼んだ。




でも、誰の耳に聞こえなくても、俺の耳にははっきりと聞こえる。




反射的に視線を落とした。





そこには、俺をまっすぐに見上げる春川がいた。





息が詰まった。




直視できずに、慌てて目を逸らす。






「………あ」






声が上手く出せない。




心臓が張り裂けそうなくらい動悸していた。





でも俺は、渾身の演技で、笑みを浮かべ、床に向かって言う。






「………卒業おめでとう、春川。


あ、アルバムにコメントか?」






他の生徒に対するのと同じように。




そう自分に言い聞かせながら応対する。