「そ……そうか………」





先生は指先で頬をぽり、と掻いて、ココアを一口飲みました。




向こうにある滑り台のあたりにぼんやり視線を当てている横顔は、やはりまだ気が抜けているように見えます。




先生は、後悔しているのでしょうか。






「………実家を出て来たこと。


後悔、していますか?」






小さく訊ねると、先生はゆっくりとこちらに顔を向けました。







「そうだな………少し、な。


田舎に埋もれたくない、なんて、下らない、誰にでもある思春期の思いだよ。


今思えば、別に実家をでることはなかった。


教師はどこにいたってなれるし………。


でも、意地を張ってそれをずるずる引きずって、母さんの死に目に会えなかったのは、………本当、俺って馬鹿だな」