………錦市場、ときたか。



いかにも春川らしい。




漬物や干物、魚介類の店が立ち並ぶ錦市場は、それ相応の匂いが充満していて、普通の女子高生なら敬遠しがちだが。





料理好きな春川にとっては、さまざまな食材が売られている錦市場は魅力的なのだろう。






「………先生」





「ん?」





「どうして、笑うんですか………」






すこし恨みがましそうに、いじけたような声音で春川が言ったので、俺は自分が口許に笑みを浮かべていたのに気がついた。






「いや、はは、ごめん。


春川らしいな、って思ってな」





「そうですか……?」





「うん。さ、行こうか」





「はい」