「どうしたんだ? 春川。


あれ………ひとりか?」







優しい声がすうっと耳に入ってきて、私は、喉の奥のほうが苦しくなるのを感じました。




なんとか声を振り絞り、






「………はぐれてしまいました」






と小さく答えると、先生が「はぐれた?」と首を傾げます。






「あの、ぼんやり、していたら………皆を見失って、しまって………」






すると、先生は先ほどの古書店に目を向け、納得したように「あぁ」と言って、こらえかねたようにくすりと笑いました。






「春川でも、はぐれたりすることあるんだなぁ」