黒毛なんて、なんだか牛の種類の名前みたいだから、失礼なんじゃないかな、と思うけど。




でも、大河原さんは赤毛のアンみたいに素敵な女の子の空気感を持っているから、そういうふうに呼ばれてしまうのは仕方がないのかな、とも思う。






大河原さんは、基本的に、大学では誰とも喋らないらしい。




もちろん、確証はないんだけど。



入学以来、半年以上も僕は大河原さんのことを気にしていて、見かけるといつも目で追っている。



それなのに、一度も、大河原さんが誰かと会話をしているのを見たことはない。





大河原さんは、いつだって、一人で学食のラーメン定食を食べ、一人で颯爽とキャンパスを闊歩しているのだ。






そんなところが、凛としていて、毅然としていて、かっこいいなぁ、と僕は感心してしまう。






だって、みんな、一人でいるのがなんだか寂しくて、一人でご飯を食べるのは恥ずかしいと思って、たいして仲良くない人とでもつるんでしまうものだよね。