講義が始まると、大河原さんはしっかり前を見て先生の話を聞き、大事なところはルーズリーフにメモをする。




きれいな、細かい文字で、さらさらと書き込みをする姿に、僕は見惚れてしまう。





大河原さんは、とてもきれいな横顔をしている。




賢そうな眉や、思慮深そうな瞳、すっとした鼻筋、薄い唇、尖った顎。





いつまで見ていても飽きない。





視線を上げ下げするたびに、まったく癖のない、つやつやの黒くて長い髪が、さらさらと音を立てて揺れる。





この、腰まであるストレートの黒髪が、大河原さんの風変わりな容姿の中でも特に目を引くので、大河原さんは『黒毛のアン』だなんて呼ばれている。




もちろん、いつでも本を読んでいて、どこか夢見がちな雰囲気を持っていることから、『赤毛のアン』になぞらえられているのだ。