「で? 林くんは、あたしに一目惚れしてくれて?


それで、あたしの忘れていったきったない輪ゴム一本、わざわざ息切れするほど走って、届けてくれて。


そんで、その輪ゴムが、記念に欲しいって?」






「う、うん………」







そうやって言葉にされると、我ながら、なんて突拍子もない行動………。







「で、この輪ゴム、持って帰ってどうするの?」






「えっ、そこまで考えてなかったけど………失くさないように、どこかにとっとくよ」






「乙女かっ!!」






大河原さんは、こらえかねたようにぶっと吹き出して、大笑いを始めた。







「林くん!」





「はいっ?」





「おもしろいね、あんた!」





「えっ……それ、褒めてくれてるの?」





「褒めてるに決まってんじゃん!」





大河原さんは、あははと豪快に笑う。




こんなふうに笑い声をあげる人だったんだなぁ。





知れば知るほど、大河原さんは、とっても素敵な人だ。