「………そう、なのかも………」








ーーーそうだ。




僕は、大河原さんに、一目惚れしたのだ。




あのとき。



希望と不安に胸をいっぱいに膨らませて、浮かれたような顔で集まって喋る新入生たちの間を。



ひとり、飄々とした顔で黒髪をなびかせ、ぴんと背筋を伸ばして、堂々と、颯爽と、通り過ぎていった大河原さんに。






そう自覚してしまうと、今度は、もう、言葉にならないくらい、恥ずかしくてたまらなくなってきた。





僕は、恋する相手と、いま、二人きりで向き合って会話しているのだ。





心臓が、飛び跳ねて、飛び跳ねて、口から飛び出してきてしまいそうだ。




僕はどぎまぎする心を必死で押さえつけながら、大河原さんをちらりと見た。





「そうなのかも、って、あんた、他人事みたいに」






大河原さんが、心底おかしそうに、ふふっと笑っている。