「……………」





「……………」






しばし、無言で見つめ合う、大河原さんと僕。





………うぅっ、気まずいよー。



あぁ、僕ってやつは、なんてことを言っちゃったんだろう?





大河原さんは大きな目で、じぃっと僕を見上げている。




僕は、実験台に乗せられて観察されるマウスのような気分だった。





「………あのさ」





「はい?」





「あんたはあたしの名前を知ってるんだよね?」





「………えっと、うん……風の噂で」





「ぷっ」





大河原さんが噴き出す。




笑うと目が三日月のようになって、とてもチャーミングだ。






いま、僕は、大河原さんの笑顔をひとりじめしている。




そのことが、なんだかくすぐったくて、嬉しかった。