「え、あー、まぁ、うん……いらないってゆーか………」






大河原さんが頭を掻きながら言う。






「あのさ、べつに、あんたがせっかく届けてくれたのに、これ捨てちゃうとか、そういうことじゃないよ?」






「うん」







どうやら大河原さんは、僕に対して気を遣ってくれているらしい。







「でもさ、輪ゴムは家に大量にあるわけで。


教室に忘れてきた輪ゴム一本、無いなら無いで困らないもんだし。


わざわざ届けてもらうほどのもんでもないってゆーか………。


あ、これ、べつに、悪気があって言ってるわけじゃないからね?


とにかく、あんたは、こんなゴミみたいな落とし物を、わざわざ走ってきて届けるような、奇特な人間だね、っていうことを言いたいわけで」






「じゃ、その輪ゴム、もらっていい?」







気がつくと、僕は、大河原さんの言葉を遮るようにして、そんなことを言ってしまっていた。