どこにいても、なにをしてても、ひとり異彩を放つ、筋金入りの変人と名高い斉藤くん。


彼はもちろん、クラスの皆から、いるのにいないようにーーーつまり空気のように扱われている。



例えばペアを作るときには誰も声をかけず、斉藤くんはいつも一人で残る。


遠足のグループや、バスの座席決めのときも、斉藤くんは最後までどこにも属さない。



ーーーでも。

でも、ですよ。



その雰囲気、あたしの優等生の血が、騒いでしまうわけですよ。



クラスから爪弾き者にされ、仲間はずれにされ、見て見ぬ振りをされている変わり者の困った生徒。


その心をあたしが開いて、みんなに溶け込ませる。



そりゃもう、優等生冥利に尽きるってものですよ。



というわけであたしは、日々、斉藤くんの心を溶かし、「うん」とか「すん」とか言わせてやろうと、闘志を燃やしてるってわけ。



あたしは佐野先生からもらったプリントをぎゅっと握りしめ、大きく深呼吸をして気合を入れた。