というわけで。

斉藤くんは、いわゆる『キモオタ』であるらしい、というのが我がクラスでの定評になっている。



斉藤くんと喋ったことがある人は、もちろん誰一人いない。


担任の佐野先生でさえ、斉藤くんと会話するのは諦めているらしく、事務的な連絡を一方的に伝えるだけだ。



そんな斉藤くんは、4月のはじめに行われたクラスの係決めのときに、副委員長に決まった。


もちろん、立候補したとか、推薦されたとかではない。



どんどん係が決まっていく中で、斉藤くん一人がぼんやりと頬杖をついて窓の外を眺めていて、気がついたら副委員長だけが空いていた。



佐野先生が困ったように、


「斉藤。残ってるの、お前だけなんだけど、副委員長は嫌か?」


と訊ねた。



斉藤くんは先生を見つめて何も言わずに座っていたので、拒否しなかったというだけの理由で、副委員長に就任してしまったのだ。



あたしは後から先生に、あんな流れで学級委員を決めていいんですか、と訊いてみたんだけど。



「まぁ、委員長がお前だから大丈夫だろ」


と呑気に笑っただけだった。



そういうわけで、あたしと斉藤くんは、一緒に学級委員を務めることになってしまったのだった。