ーーーちょっと、にわかには信じがたいんだけど。




ここまでの話を整理すると、つまり。






斉藤くんは無口なんじゃなくて。




ただ、異様に声が小さくて………あたしが話しかけたことにちゃんと返事をしていたけど、周りがうるさいとかき消されてしまって、あたしには聞こえていなかった。




斉藤くんの唇ふるふるは、ちゃんと何かを喋っているっていうことだった。






と、そういうこと?







「…………なにそれ!!


そんなこと、ありうる!?」






あたしが叫ぶと、ふるふる、斉藤くんの唇が震えた。





あたしは「聞こえません」と指摘する。




すると斉藤くんは「あ、ごめん」と声を大きくした。






「ーーー俺は、小林さんのこと、無視したことなんかないよ。


というか、小林さんが話しかけてくれると嬉しくて、どきどきしながら会話してたんだ」






「…………聞こえてなかったけどね」






「そうだったんだ………。


小林さんは、他の人とは違って、一言だけ話しかけてすぐに呆れたみたいに立ち去ったり、しなかったから。


てっきり会話が成立しているものだと………」






「あたしはてっきり、斉藤くんは無口なんだと思って、リアクションがなくても一方的に喋りまくってたんだけど」






「そうなんだ……小林さん、やっぱり、優しいね」