「………え? 斉藤くん、何か言った?」





「………え? あ、こんな大声、ひさしぶりに出した、って」






「ん? 大声? いつ?」





「え、いま、まさに」






読者の皆様に、いちおうお知らせしておきますが、いま喋っている斉藤くんの声は、ものすごーく小さい。




音声つきでお伝えすることができないのが残念で仕方がないけど、もし周りに人がいたら、絶対に聞こえないってくらいの、囁くような小声…………




…………って、あれ?





うそ、もしかして…………?







「………斉藤くん、いっつもあたしが話しかけても、無視してたよね」





「え、無視なんかしたことないよ」






斉藤くんがぼそぼそと、やっぱりちっちゃーい声で答える。






「はっ!? いつも唇ふるふるさせるだけで、何も答えてくれなかったじゃん!」





「そんなことないよ、いつもちゃんと答えてたよ」





「なにそれ………」






あたしが愕然としていると、斉藤くんがあっと気づいたような表情になって、それから照れくさそうに笑った。







「………俺、なんか、声がひとよりも小さいらしくて。


もっと大きく喋れって、親によく怒られるんだけど………もしかして、俺の声、聞こえてなかった?」






「……………はぁっ!?」