あたしは斉藤くんから文庫本を受け取り、中をぱらぱらめくった。




なんだか小難しい感じの小さい文字がぎっしりと並んでいる。





目次のページを見ると、太宰治の短編集だった。





あれ、意外と普通だ。




てっきり、萌え系の女の子が出てくるうなやつと思ってたのに。






「太宰治、好きなの?」





ふるふる。



たぶん、好きなんだな。






「ふぅん、昔の純文学が好きってこと?」






ふるふる。




そうなんだな。






なんだか、だんだん、斉藤くんと会話が成り立っているような気がしてきた。






おかしいなぁ。



完全に、あたしが一方的に喋ってるだけのはずなのに。





でも、斉藤くんはやっぱり、しっかりと目を合わせてくれているから、ちゃんとコミュニケーションがとれているような気がしちゃうんだよね。