放課後の教室は、いつも通り騒がしい。




今からカラオケ行かん?とか、あー部活マジでめんどい、とか、早く帰ろーとか、みんなが口々に喋っている。




あたしの目の前の斉藤くんだけが、ひっそりと物静かに座っている。





あたしは斉藤くんをじいっと見つめながら、口を開いた。







「ねえ、斉藤くんてさ」






ふるふる。



斉藤くんの唇が震える。






「どんな音楽、聴いてるの?」






ふるふる。






「………本は? どんなの?」






ふるふる。






「純文学? エンタメ小説? あ、ライトノベルとか?」






あたしが訊くと、斉藤くんはじっとあたしの目を見てから、もぞっと動いた。





そして、カバンの中にしまいかけていた本を、そっとあたしのほうに差し出してきた。







「え、なに、見ていいの?」





ふるふる。




よく分からないけど、見てもいいらしい。