授業が終わり、ホームルームの時間になった。




開始のチャイムがなり、号令をかけた後、あたしは教壇へと向かう。





ちらりと窓際の席のほうを見ると、斉藤くんが机の間を泳ぐようにすいすいと前に出てくるところだった。





斉藤くんは、あたしが何を喋っても、うんともすんとも言わないんだけど、頼んだことはしっかりとやってくれる。




だから、斉藤くんとペアで学級委員をやることは、意外にも、別に何も大変なことはなかった。




あたしが適当に役割分担をして、どんな仕事をやってほしいかを(一方的に)伝えれば、斉藤くんは唇を震わせながら聞いて、黙って遂行してくれるのだ。





だから、あたしのことを拒否してるとか、まったく心を許してくれてない、ってわけでもないと思うんだけど。





じゃあ、なんで斉藤くんは、いつまでたってもあたしと口をきいてくれないんだろう?







そんなことを考えながら、あたしは教卓の前に立った。




斉藤くんは、あたしの傍らにひっそりと立っている。