斉藤くんは、いっつもこうだ。






あたしと二人ペアで、委員長と副委員長になってから、はや半年。




あたしが学級委員の仕事のことで話しかけると、斉藤くんは必ずイヤホンを外し、読みかけの本を置き、まっすぐにこちらを見つめ返してくる。




その態度は、きちんと人の話に耳を傾けているときのものだ。





それなのに、斉藤くんは、一度もあたしに言葉を返してくれたことがない。




ただ、唇を震わせるだけ。







本当に、変なやつだ。




いったい、なに考えてるんだろう?



なんで何も答えないんだろ?






あたしは小さく溜め息をつき、「じゃ、ホームルームのときよろしくね」と声をかけて、斉藤くんの席から離れた。





あたしの去り際、斉藤くんはまた、唇をふるふると震わせていた。