今も、もちろん、いつもと同じく。

一人だけ音のない世界にいるように、黙ってじいっと、あたしの顔を見上げているだけの斉藤くん。



そんな問題児くんに、あたしは根気強く声をかけ続ける。


(優等生は、すこし無視されたくらいでは、へこたれないのだ。)



「でね、あたしが司会するからさ」


「……………」


「斉藤くん、書記してもらっていい?」


「……………」


「あんまり時間がないからさ、あたしが勝手にぽんぽん決めていくから、じゃんじゃん黒板に書いていってね」


「……………」


「同時進行で、この紙にも書き写しといてほしいんだけど、いい?」


「……………」



あたしが話しているあいだ、やっぱり斉藤くんは、視線を動かさず、ただふるふると唇を震わせていた。