「みなみちゃん、お腹減らないかね」


母が言う。
スリングの中で眠るみなみを眺め、私もそれが心配だ。


「出る前に飲ませたけど、眠いせいかあんまり飲んでくれなかったんだよね」


みなみはとにかく頻回の授乳が要る子だ。

ゼンさんが買ってきた『初ママの読む本』なる育児本によると、通常授乳は二時間おきらしい。
しかし彼女は一時間おきにおっぱいを欲しがる。

みなみは身体も大きいし、もしかして母乳が足りないのかな。
やっぱりミルクと混合栄養にすべきだろうか。
昼夜を問わない授乳の嵐に、ここ数日はそんなことばかり考えている。

ああ、こんなことなら、先週金曜の産後健診で聞いてくればよかったなぁ。


「一色みなみちゃーん」


測定室と書かれた部屋から看護師さんが出てきた。

当たり前のことだけど、娘の名前で呼ばれることにちょっと感動する。
この子もひとりの人間なんだなぁって、あらためて実感。