「とはいえ、ご家族のご意見もあるでしょうし、急に決めるのも不安でしょう。今日はこちらの見学者名簿にご記名いただいて、書類をお持ちください。入園のご意思がありましたら、明日ご連絡ください。明日中は仮押さえとして、みなみちゃんにこの枠は空けておきます」


信田園長はけして急かして言っているわけじゃない。
おそらく、この1枠が空いたのは奇跡的なことなのだ。今日明日にだって、この園には子どもを預けたいママから連絡が来るに違いない。
みなみのために空けておけるのは明日いっぱいが限界なのだろう。


「わかりました。帰って主人と相談しまして、明日中に必ずご連絡します」


私は信田園長に向かい、頭を下げた。



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ゼンさんには帰ってすぐにメールしておいた。
みなみの保育園候補が見つかった!って。

22時には帰宅したゼンさんは、着替えも食事も後回しにして、入園案内を熟読する。

想像したとおり、彼は今、ひとり娘の志望校を決めるような気持ちでいる。