私と向かい合い、ゼンさんが真面目な顔で言った。


「でも、会社の立場からしたら、おまえが出てくれたら助かるという頭はある」


言いたくないことを言ったせいか、ゼンさんは苦々しく表情を歪ませた。

そっか、ゼンさんは私以上に板ばさみな気分だよね。
若くして役職付きの彼は、私の夫である前に職場に責任がある。

私は少し考えてから、ふーっとため息をついた。


「ひとまず、保育園を探してみる」


「佐波、俺はおまえの上司にあたるけど、おまえの夫でもある。おまえの希望があるなら、それを会社に通すぞ。おまえとみなみを守るのが俺の一番の仕事だからな」


私は苦笑して見せた。そんな優しい人だから好きなんだ。


「ありがとう、ゼンさん。でも、会社的に大変なのもわかる」


私は社長が立ち上げた会社が好き。仕事も楽しいし、ゼンさんにも出会えた。