背後にはみなみをスリングに入れたゼンさん。私の肩から氷がひしめく鮮魚コーナーをのぞく。
ブリやアジなんかはあるけれど、鯛らしき魚はない。


「すいません、鯛を探しているんですが」


すかさず、店員さんを呼び止める彼。
店員さんがすまなさそうに言う。


「今日は仕入れがなかったんですよ」


私たち夫婦は顔を見合わせた。

ここは、近所で一番品揃えの豊富なスーパー。ゼンさんに車を出してもらってきたのに。


「どうする?やっぱり尾頭つきはないと締まらないよね」


私が金目の切り身を手にとり言うと、ゼンさんが金目をとりあげ、コーナーに戻した。


「当たり前だろう」


ですよねー。