早めの昼食の配膳が始まったころ、やっと顔を出した母のバッグを持ったその人は、目が真っ赤だ。
間違いなく母だ。
夏未先生が話してくれたのだろう。
また、泣かせてしまった。
「莉子、お母さんだよ」
私に語りかけた母は、一生懸命鼻をすすっている。
「ごめんね、お母、さん」
私がそう言うと、母は背を向けた。
背中が小刻みに揺れている。
泣いているのだ。
それはそうだ。
必死に育ててきた娘が、自分のことをわからないのだから。
「ごめんね、莉子。あなたが一番辛いのに」
再び私の方を向いた母は、何度も涙をぬぐう。
「さっきお父さんと電話で話したの。
お母さんもお父さんも莉子が困らないようにサポートする。だから、なんでも言いなさい」
「……ありが、とう」