意識しちゃダメだってわかってるけど、胸が高鳴っているのがわかる。

ソムチャイの体は、すごく引き締まっていて筋肉質なのがシャツ越しに伝わる。
よく映画とかで見て憧れた場面を、今こうして体験しているなんて。

背中にまわす手が、緊張でゆるくなりそうになる。

「つかまる」

また、ソムチャイがそう言って、片手で私の離れそうな手をつかむ。

「・・・うん」

ぎゅって握り締めると、より距離が縮まって・・・。
なんだか幸せな気分がこみあがってくる。

サムイの街は、信号がほとんどないらしく、バイクは道を進んでゆく。

繁華街を抜けると、そこには観光客の姿も少なくなり、店も少なくなった。
舗装されていない道からは、砂ぼこりが風に舞う。