「日本に来たことないの?それなのに、そんなしゃべれるんだ?」

「ソムサックは行った。僕、行ってない」

「そっか。おいでよ! 日本に来たら、今度は私が案内するからさ!」

ふと、ソムチャイの表情が曇ったような気がしたが、そのときの私には理由がわからなかった。

お会計は、やはり意味が伝わってなかったようでソムチャイががんとして『僕が払う』と言って聞かなかったので、お願いすることにした。

途絶えることのない人の波をかきわけながら、私たちはホテルに戻った。

街は夕日が落ち、少しずつ夜に近づいてきていた。


ホテルの入り口から中に入ると、タイ人の女性が私を見て、
「あ!」
と声をあげた。