夜の海には、はじめて来た。


タイのお通夜は、日本のそれと違い悲しみ一色ではないみたい。

音楽が鳴り響き、まるで小さなお祭りのようだった。

騒がしいとさえ思える時間の中、私はぼんやりとソムチャイの写真を見るしかできなかった。

いつの間にか、連れられてきた砂浜。
そこに、立ち尽くす。

今にも、ソムチャイがそばに来てくれる。
そして、私を見つけて笑うの。

あの笑顔で、私を抱きしめる。

波の音が、規則正しく、そして悲しく夜に聞こえる。

「実羽」

声に振り向くと、お姉ちゃんが歩いてくるところだった。