「実羽ちゃん」

声に振り向くと、由衣さんが駆け足でやってくるところだった。

「由衣さん」

「あーよかった。まにあったわ。まったくあのタクシー、めっちゃトロいねんて」
と、走り出そうをしているタクシーを指さして言ってる。

「わざわざ来てくれたんですか?」

「あったりまえやがなー。ほら、これ」

そう言って、私に小さな目薬のようなものをくれた。

「これは?」

「開けてみぃ」

キャップをはずしてみると、
「うわぁ」
あたり一面に、甘くてやさしい香りが漂った。

「これって、香水?」

そう尋ねると、満足そうに由衣さんはブイサインを作った。

「そう。実羽ちゃんをイメージしてブレンドしてみてん」