「あっ」

そばにいたお姉ちゃんが短く叫ぶ。

「この香り・・・」

「え? あぁ、ほんまや。社長から確かに香水の匂いするわ。ああ、なるほど」

合点したように由衣ちゃんが微笑む。

「匂いでバレるとあかんからスーツとかは変えたらしいけど、これこれ、ネクタイについてる匂いやな」

「うそ・・・」

信じられない、と言ったふうにお姉ちゃんが口を手で押さえた。

ソムサックがタイ語でなにか発したかと思った次の瞬間、

バキッ!

鈍い音がして渡辺社長は床にひっくり返っていた。