「違う、なに言ってるんだ。実羽ちゃんは少し混乱しているみたいだね、はは･･･」

その笑いがわざとらしく聞こえた。

「そ、それに、どうして僕が実羽ちゃんを拉致する必要があるんだ。なんの意味があるんだい？　そもそも、連れ去ったのだってウアンかもしれないじゃないか」

「それは違います」

「え？」

「私は袋をいきなりかぶせられました。それは私に顔を見られたくなかったから。ウアンは普通にその後あらわれました。だって売ってしまえば、私はここからいなくなるんだし。だから彼ではないと思います」

私の言葉に渡辺社長がグッと詰まる。

「で、でもっ･･･。僕がウアンの不動産を調べたんだ。そこから君が監禁されている場所を見つけたんだ。感謝もされず、逆に疑うなんてひどいんじゃないかね？」