ゆっくり上半身を起こしたアイスがなにか、ウアンに言った。
その言葉はとぎれることなく、つぶやくような声だけどウアンを狼狽させている。

「アイスはね、もうやりたくないんだって。自由にしてあげて、もう十分でしょう?」

日本語がわからないと知っているけど、なにか言わなくちゃ気が済まなかった。

「女の子たちをなんだと思ってるの? あんた、絶対地獄に落ちるからっ」

ボソボソ
と、つぶやいたウアンが私を振りかえった。

その目は怒りのあまり、焦点が私に合うことなくユラユラせわしなく動いている。

ポケットからウアンが右手を出して、こちらに向けた。

その手に光るもの。

「え・・・」

ナイフだった。

私に向かってウアンが動き出す。

まっすぐにナイフを構えて。