「実羽。私、チェンマイで生まれた。もう、家族いない。でも、帰るね」

「チェンマイ?」

「遠くね」

はるかかなたを指さしてみせた。

「もう、やめる。心、かわいそう」

「うん、心がかわいそう」

私も繰り返した。

ジャラッ

アイスがポケットから鍵を取り出すと、鉄格子の扉にそれを差し込む。
鈍い音がして、重い扉がゆっくりと開いた。

「・・・いいの?」

私が出ちゃったっら、アイスが叱られるんじゃ・・・?

「マイペンライ。私、すぐに逃げる」

アイスが歯を見せてはじめて笑った。