手を伸ばして受け取ったけど、状況がわからない。
ひんやりするコップを持ったままで、ぼんやりとアイスを見る。

「あなたは誰?」

さっき聞いたことを、また尋ねた。

「アイス。・・・それだけ」

アイスは急に興味を失ったように、手元の本に目を落とした。
ブックライトがアイスの顔を名前のとおり冷たく映している。

「私をどうするつもり? それより、なんでこんなとこに私はいるの?」

アイスはまるで聞こえないかのように、本から目をはずさない。

「ねぇ、日本語わかるんだよね? 私、帰らなきゃいけないの。ここから出してよ」

立ち上がろうとしたけれど、なんだか力が入らなくて、上半身だけずるようにアイスのそばに行く。

太い鉄格子を握ると、ひんやりした感触がした。