「健治!」
受付の前で、亜矢音が呼び止めた。

隣に私がいるのを見て、一瞬苦い顔をしたが、すぐに健治の腕に自分の腕をからめた。

「弘樹、ICUにいるって。和田や弘樹のお母さんも来てるらしいよ」

「そうか。容態は?」

「わかんない。私も、今来たとこだし」
そう言ってふたりで歩きだした。


私はその場から動けない。

もう、帰ってもいいのかな・・・?

入り口をぼんやり見やる。

すると、亜矢音が足を止めてこっちを見てきた。

「あんた、帰るの?同じクラスの友達がこんな状況の時に帰るの?ほんっと、都会の人って冷たいんだね!」