弘樹は、その声にも気づかない様子で、宙を見て口を開いている。


「あ･･･」
ようやく出したその声が震えている。


「おいって！」
健治が弘樹の腕をはたく。

が、そちらを見ようともせず、驚愕の表情を浮かべるだけ。

「南山君？」
和田がそう声をかけたとき、
「うわああああああ！」
突然、弘樹は両手を頭の横にあてて絶叫した。

驚いて弘樹を見ると、これ以上ないくらい目を見開いて長く叫んでいる。

「弘樹！？」

健治が腕をつかむが、それを勢いよく振り払うと再び悲鳴をあげた。

「なんで･･･なんで･･･」
パクパクと口を動かして弘樹がつぶやく。