「え、ええと・・・」
弘樹は教科書をめくって、ようやく目的のページを開き、
「『春はあけぼの ようよう白くなりゆく』・・・え?なんて読むんだっけ?」
と隣の女子に聞いている。

再び爆笑。


その様子を、私はじっと見つめた。

・・・大丈夫、だよね?

心配する義理もないのに、不安になった。


ようやく読み方を教えてもらった弘樹が、前を向きなおす。

そして、口を開き、今まさに声を出そうとしたポーズで固まる。

「・・・」


沈黙が教室を支配する。


「おい、どうしたんだよ」
前の席の健治が振り返って言う。