「大丈夫?」
その男子生徒は、私を見て尋ねた。

春の日差しを背に受けて、顔がよく見えない。

「え?」

「大丈夫?」
もう一度そう言って、近づいてくる。

その顔がようやくちゃんと見えた。

少し茶色がかった髪に、高い身長。

やさしい目で私を見ている。


「なにが?」

「だって、なんか唇をずっとかみしめているからさ」

「あ、ほんとだ」

知らないうちに力が入っていたみたい。

思わず笑ってしまう。