「逃げんのかよ」
健治が口の端を上げて、挑むように言った。


「・・・トイレ」
そう言って、私は教室を足早に出た。


みんなの視線が追いかけてくるような気がした。




図書室。

転入して早々、図書委員会を押し付けられた私にとって、ここは唯一ほっとできる場所。

鍵も持ってはいるが、日中、図書室は生徒に開放されている。

と、言っても、昼休みはいつも閑散としている。

みんな校庭で遊んだり、教室でしゃべっているのだろう。