・・・守をいじめていた生徒が実在するなら、おそらく彼らだろう。

「いやさ、こいつさぁ、いっつも澄ましてるからさ」
健治があごで私を指した。

「あー、お嬢さんは上品だからな。東京人だもん」
ニヤニヤしながら弘樹が同意する。

「お嬢さんって失礼だろーが。えと、名前なんだっけ?」

「・・・平野桜」
なんで答えなくちゃいけないんだ、と心で反発しながら私は言う。

健治は、
「は?桜?なにその変な名前」
と、私ではなく横にいる弘樹に笑いかけた。

「桜って、あの桜?」
弘樹はわざとらしく考えこむ。

「桜って春だけの花だろ。じゃーお前、春以外は死んでんだ?」
健治がバカにしたように言った。

知らずに両手をスカートの上で握りしめていた。
「変な・・・名前じゃありません。ちゃんと意味があるんです」
言い返してはみたが、敬語になってしまう。