「なー、お前さぁ」

突然、頭上から声が降ってきて、私は驚いて見上げた。

「あ、驚いたか。悪ぃな」

「いえ・・・」

声の主は、クラスでいちばん背が高くて体格も良い榊原健治。

体の大きさに比例して、声も大きく粗雑で乱暴。

誰も逆らわないから、ますます強くなる。

短い期間観察しているだけでも、彼がこのクラスのボスであることは容易に理解できた。


・・・なんで話しかけてくんの?今まで、ずーっと無視してたくせに。

「なになに、健治。なんでお嬢さんと話なんかしてんの?」
横から健治に話しかけるのは、彼の子分とも言える、南山弘樹。

いっつも健治にひっついている。

健治が男子をからかうと、おもしろがってそれに乗っかる。