「春だけじゃなくて・・・。夏は葉を生い茂らせる。秋は色のついた・・・葉を散らして、冬は雪が花のように枝に積もる。一年、毎日をいろんな色で・・・染めてほしいって・・・」

最後は言葉にならずに、桜は泣き崩れた。

脳裏に桜が四季を彩るのが見えた。

春の満開の桜が散り、夏の日差しの中揺れる葉。

秋に降る落ち葉、雪のつもった枝。

「そうか、分かった。・・・いい名前だな。前はバカにしてすまなかった」

「う・・・榊原君」

風が、頬にあたった。

窓が目の前に迫る。

「やだ・・・いやだよ!守君、やめて!やめてよ!」
桜が泣いて叫ぶのを、冷たい目で守は見ていた。

「くそっ・・・」
健治の手が勝手に動き、窓枠を持つ。