「くそっ」

意志とは反する動きに健治がもだえるが、やがてその足が一歩ずつ前に出てゆく。

頭以外、自分の意志では動かない。


「ふふ。おんなじ恐怖を味あわせてあげるね」

その言葉に健治は、前方を見た。

キィィィィ

今、窓が自然に向こう側に開くのが見えた。

「桜っ!」

はじめて健治は桜の名前を呼ぶ。

「・・・うう」

桜が苦しそうに体を起こして目を開く。

「け・・・健冶君」