「もう少し、早く会えてたらな」

「え?」

「いや、なんでもない」
健治は軽く首を振った。

・・・もう少し、早く出会えてたなら、なにかが変わったのか?

これまでの自分のやってきたことが重くのしかかる。

・・・さっきは、親父にも悪かったな。


その時、急に図書室の中に風が起こった。

桜が、ハッとして時計を見る。


「0:00・・・」

健治は桜のそばに行くと、肩を抱いた。

「大丈夫だ」

根拠のない自信が桜に伝わらなけばいいが・・・。

風は中央で円を描き、やがて人の形に変わりだす。