春だというのに、夜はまだ寒い。

散った桜の花が、座った足元で汚れて固まっている。

ここ数日の出来事が夢のように思えた。

弘樹にはじまり、和田、そして亜矢音。昨日はついに知佳まで。

守の遺書のとおりにみんな消えてしまった。

今朝は桜に情けないところを見せたが、今の健治は不思議と落ち着いていた。


あんなに恐怖を感じていたのに、もう、なにも感じない。


___分かっている。


誰からも疎まれていることを。

みんなが腫れ物に触るように健治に触れた。

弘樹も、ただ怖いから合わせていることを、誰よりも自分自身がわかっていた。